建設業社長との出会い
2021年の夏のことです。
20年以上付き合いのある不動産会社の方から「紹介したい社長がいる」と言われて、ゴルフに誘われました。正直その時は「また営業の匂いがするなぁ」ぐらいに思ってたんです。でも実際に会ってみたら印象はまったく違いました。
建設業を営む年下の社長。いや、めちゃくちゃ気配り上手で明るい。初対面なのに妙に波長が合うんですよ。ゴルフのあと、夜は焼肉。もうこの流れ、典型的な“濃い付き合いコース”です(笑)
で、焼肉を囲んでいたら「事業再構築補助金に挑戦したい」と切り出されたんです。聞けば、銀行経由で大手コンサルにも相談したけど「新規性が弱い」とか言われて断られたらしい。税理士にも当たったけど、あっちは本業が税務ですから事業設計までは踏み込めない。そらそうやな、と。
「結局どこに頼めばええねん…」って状態で僕の前に来たわけです。で、その場で軽くヒアリングしたら、なるほど建設業って単価は大きいけど利益は薄い。日銭も回りにくい。コロナ禍で公共工事も延期ばっか。そらしんどいわな、と。そこで社長が出した案が「コインランドリー事業」。いや急に!?って思ったけど(笑)、理由を聞いたら納得でした。
事業案の“穴”と僕の妄想
ただね、事業再構築補助金はそんなに甘くないんです。新規性の証明、既存売上の1/10を超える収支計画。社長の会社は年商数億。つまり、5年後には月数百万円の売上をコインランドリーで作らなあかん計算になる。普通に考えたら無理ゲーです。
しかも、コインランドリーって回収まで10年かかるのが普通。中古機器で初期投資を圧縮しても、なかなか数字が合わない。それでも「補助金で2/3カットできるなら実質1000万でいける」って社長は本気。そこに僕の頭のスイッチが入ったんです。「ほな、この無理ゲーをクリアできる絵を描きたい」って。
翌日から、ランドリー市場を徹底的に調べました。利用者の大半は女性。1回の利用で60分待ち。いや、これ地味にしんどいんです。大体みんなコンビニ併設で時間潰すんですけど、車の中でエンジンかけっぱなしでスマホポチポチ。環境にも悪いし、正直時間の使い方としては微妙すぎる。
そこで僕の妄想が始まります。
コインランドリーを“待ち時間の楽園”に
僕が描いたのは「コインランドリー × 個室くつろぎ空間」でした。
ランドリーの横に小さな個室を5つ用意して、洗濯と乾燥を待つ60分を「苦行」から「ご褒美タイム」に変える仕掛けです。
個室にはリクライニングチェアを置いて、映画や雑誌が見放題。さらにEMSとか脱毛機とか、痩身系の機械を導入して「ついでにメンテナンス」までできるようにしました。いや、もうランドリーなのかエステなのかよく分からん状態ですけど(笑)、これが新規性になるわけです。
利用者は「待つ」じゃなくて「楽しむ」感覚で来るようになる。コンビニでジュース買って車で暇つぶししてた人たちが、こっちに流れてくるわけです。僕はこれを「60分のアップデート」と呼びました。
補助金申請という名の“テスト勉強”
もちろん、アイデアだけじゃ補助金は通りません。計画書が点数で評価される以上、テスト勉強みたいに一個ずつ潰していくしかない。目的適合、新規性、市場性、収益性、実現可能性、政策性。もう審査項目を壁に貼って、ひとつひとつ攻略するRPG感覚です。
利用者像は「子育てと家事と仕事で毎日が手一杯の女性」と設定しました。その人が「なぜ来るのか」「なぜリピートするのか」を数字と行動で裏付けて書き込んだんです。客単価や稼働率のシミュレーションも、知り合いのランドリー運営データを参考にしました。
途中で「ほんまにこれで通るんか?」と心が折れそうになりましたけどね。夜中にパソコンの前で何度も保存ボタン押して『頼むからフリーズせんといてくれ!』って祈ってたこと思い出します。
採択、そしてその先へ
結果は採択。電話口で社長の声がちょっと震えてました。僕は「ここからが本番ですよ」とだけ伝えました。いやほんま、補助金の採択はゴールじゃなくてここからがスタートなんです。
投資3000万円が補助金で実質1000万円に圧縮され、5年以内に回収できるスキームが回り始めました。オープンしたランドリーは今も稼働していて、安定した収益を生んでいます。しかも笑えるのが、僕の会社の入っているビルの下の階にオープンしたってこと。下に降りたら、あの焼肉の夜に話していたランドリーが目の前にあるんです(笑)
この案件で強く感じたのは、「不採択には余白がある」ということでした。税理士がダメ、大手コンサルがダメって言っても、見方を変えたらチャンスは残ってる。日常の60分をひっくり返すだけで、新規性も収益性も描けるんです。
補助金は点数ゲーム。でも点数を生むのは「現場に根ざした発想」や「生活者に刺さる体験設計」。つまり、机上の計画じゃなく「ほんまに回る事業」なんです。
あの社長とは今も付き合いが続いていて、新しい補助金の話もしています。
あの日焼肉の席で「一度僕に考えさせてください」と伝えた瞬間から、事業は大きく動き出しました。
補助金は点数ゲームですが、見方を変えれば“未来を動かす武器”です。
もし今あなたが「申請しようか迷っている」「不採択で諦めそう」なら、ぜひ事業計画書の無料診断を活用してみてください。
あなたの挑戦を次のステージへ引き上げるきっかけになるはずです。